NPOの委託業務は課税対象になるの?ならないの?

5月は決算の時期ですね。NPO法人も当然ながら確定申告が必要で、税金を算出して納める必要があります。ただ、NPO法人が取り組む事業の1つ「委託業務」については、収益事業にならない、つまり課税対象にならない可能性が非常に高い!というのが今回の話です。

NPO法人が確定申告で支払う主な税金

・国の税金
→法人税、地方法人税

・都道府県の税金
→法人県民税
→法人事業税・地方法人特別税

・市の税金
→法人市民税

※同じタイミングで「消費税」の納税もありますがここでは除外。税務に困るNPO担当者の多くは、設立間もない小さなNPO(課税対象収入が1,000万以下)だと想定されるため。

税金は全利益に対してかかるものではない

知識0だけど必要に迫られて税務をやりはじめた人間(つまり私w)は、最終の利益(当期正味財産額)に対して課税されるものと思っていました。けど実はそうではなくて、課税対象とされる事業収入から、同対象の事業経費を差し引いた金額にかかってくるものでした。

特にNPO法人の場合は、課税対象とならない事業が結構あったりします。会費や補助金などの収入がその典型です。その中で、とっても曖昧なポジションにいるのが「委託業務」です。

委託業務は請負業なのか?

委託業務が課税対象になるかどうかは、その委託業務が「収益事業」とみなされるかどうかにかかってきます。収益事業の種類は大きく34に分類されており、それに該当するかどうかで判断されますが、NPOの業務で最も該当する可能性が高いのは「請負業」に当てはまるかどうか、だと思います。

(外部リンク) 税務用語辞典 収益事業の範囲

うちのNPOの場合、香美市から「移住業務」と「子育て支援業務(ファミリーサポートセンター)」を受託しています。業務の内容は「相談対応」「現地案内」「イベント開催(ツアーや講座、交流会など)」「人のマッチング」「情報発信」などで、委託業務の仕様書(契約書)に明記された内容を実施する形で受託しています。

これが請負業に当たるかどうかの1つの目安が、契約で「成果物」を求めているかどうかになると言えます。

請負とは民法で以下のように定義されています。

「仕事の完成を約束としてその仕事の結果に対して報酬を受け取る契約である」

つまり、契約書で明確に「成果物」が求められていれば、それは請負業となります。私たちの移住業務だと「10組移住させること」「100組の移住相談を受けること」のように明記されていれば、それは請負業務となります。でも私達の契約は「相談対応や現地案内など、指定する項目をやってくださいね」という内容です。

これは仕事の結果に対する報酬ではなく、指定された仕事を行うことに対する報酬と言えます。極端な話「相談を受け付けましたが相談者は0でした!」でもお金をもらえる契約内容ということです。なので請負業には該当しないと言えます。

もちろん、本当に相談0なら次年度の委託業務は間違いなく落とします笑。そんな訳にはいかないから契約が成り立つんですよね。反対に「●組移住させること!」という請負契約になるなら、報酬単価を今よりもっと上げてもらわないとリスクが高すぎて受けられない!になると思います。

委託業務は高い確率で非課税

ここでは移住・子育て支援業務を例に挙げましたが、NPOの委託業務は多くの場合が成果の約束ではなく、仕様書で指定された項目を行う業務になっていると思いますので、それは課税対象にはならない、と言えそうです。これが特産品の製造販売とかなら「物品販売業」や「製造業」に該当するため課税対象になります。

あと、施設の管理(指定管理)については、どうも課税対象になるみたいです。経験が無いのでわからないですが、軽く調べた感じだとそうみたいです。

ということで、NPO法人が取り組む委託業務は、収益事業にならない、つまり課税対象にならない可能性が非常に高い!というのが今回のまとめです。

この記事で、もやもやしているNPO税務担当者の心がスッキリすれば幸いです。

※今回の記事は私が税務署の担当者にヒアリングした内容をもとに作成した個人解釈となります。みなさんの運営するNPOの委託業務が課税対象になるかどうか、正式な判断は最寄りの税務署に問い合わせてみてください。

【注意】
今回は話題にあげなかった「消費税」については、請負業ではない委託業務も「課税対象」となりますのでご注意くださいね!

【関連リンク】
NPOも収入1,000万超えたら消費税。けど非課税収入もあるよ。
http://konxjun.com/2019/03/30/npo_shouhizei/

こちらの支援は寄付控除がありそうです

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