田舎暮らしと日本人の美意識

移住の仕事をしている中で「何のために移住を進めるのか?」という根本的なことを話し合う機会がありました。ひとつのきかっけとして以下の記事を元に意見交換した形です。



やっぱり若者は東京へ。日本の人口政策が大失敗している論理矛盾
https://newswitch.jp/p/18862

ここにでてくる次の言葉がとても印象的でした。

根本的な原因は「自治体を消滅させないために定住者を増やす」という論理矛盾にある。

移住相談の基本は移住者に寄り添うこと。だけど移住の目的は自治体や集落を消滅させないこと。何のために移住に取り組むのか。考えると正直わからなくなってきます。

なぜ私は田舎の集落を残したいと思うのか?

私が地域づくりNPOをつくったきっかけは「田舎の集落を残したい」という気持ちが大きく、そのために持続可能な田舎を目指していこう、というところから始まりました。じゃあなぜ田舎の集落を残したいと思ったのか?改めて自問してみると、次の答えにたどり着きました。

田舎の暮らしは美しい

すごく曖昧です。けど、そんな曖昧な表現でしか表せない理由でした。

田舎には棚田や蔵付きの古民家など、見るからに美しい景観が残っています。でもそれは人が手を入れて維持しているからこその景観であって、自然そのものという訳ではありません。

だけどこの自然と寄り添う暮らしには、自然から食べ物をいただいたり、自然素材で道具をつくったり、暮らしの中に川のせせらぎや虫の声が溶け込んでいたりします。時には自然が猛威を振るい大災害に見舞われることもあります。

田舎には、そんな自然に対し畏敬の念をいだき、多くを求めず謙虚に暮らす姿があります。

日本の文化とは何か?と問われれば、こうした自然と共に生きる暮らしそのものと、そこから生まれたお祭りやモノなどがそうなのだと私は思います。

田舎が無くなれば日本は無くなる?

現代の人が集まる「都市」は世界中ほぼ同じで、その国本来の文化は地方にしか残っていないのではと感じています。だから世界から見る日本文化は田舎の暮らしにこそあるのではないでしょうか。

田舎には日本人の美意識みたいなものが詰めこまれています。田舎が無くなれば日本は日本で無くなって、世界の一部になってしまうかもしれない。だから田舎の集落を残したい。

かなりえらそうですが、こんな風に思いました。

といっても、実際の田舎はそんな美談だけではなくて、自信を無くして諦めていたり、閉鎖的で差別的なところがあったりとネガティブな面も多々あります。でも明暗があるのはあたりまえのこと。地方だからこそ世界のことを考え、田舎こそが日本なのだと発するべきと思います。

こういった数字にはできない田舎の美しさを発信して、実際に田舎に住む人を増やして、日本の田舎を誇れる地域にしていかないとですね。

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)

Pocket